スタッフ定着ノウハウ

スタッフの定着に必要なこと

クラブで働くスタッフの定着に必要だと言われている3つの魅力。ご存じでしょうか?それは、以下の3つです。

  • 構成員(スタッフ)の魅力
  • 活動の魅力
  • 特権の魅力

あなたのクラブで、

『せっかく採用したのに、続かない』

『手塩にかけ育成して、やっとプログラムを担当できるようになったのに…退職を申し出てきた』…ということが継続して発生しているのであれば、構成員(スタッフ)、活動、特権いずれかの魅力が欠けている、もしくはうまく伝えることが出来ていないのかもしれません。それぞれを確認してみましょう。

構成員(スタッフ)の魅力

これは、そのものずばり…あなたのクラブで働くスタッフに魅力があるかどうか?です。想像してみてください。これから働きはじめようとしている人間にとって、先輩スタッフが元気よく、目を輝かせながら仕事に取り組んでいる姿は大変魅力的で、カッコよく映るものです。これとは逆に不機嫌で、覇気がなく、活気のない職場で、惰性で仕事をしている姿を見せられるては、なんだか働きたくなくなりますよね。

ちなみに…厚生労働省が毎年8月に公開している『雇用動向調査』で退職理由発表されていますが、労働条件や賃金に次いで、『職場の人間関係が悪かった』という項目が毎年上位にランキングされています。http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/17-2/index.html

賃金を上げても、労働条件を整えても、職場の人間関係が悪ければ人は仕事を続けることが出来ない…ということなのです。職場の人間関係を良くするためには…それはそれは、沢山の要因が絡み合っている訳ですから一筋縄ではいきません。ですが、私の中で最も重要だと考える項目は、すぐチェックができます。それは、クラブの責任者であるあなた自身が部下から見て『魅力的』に見えているかどうかということです。

『○○さんみたいになりたい』

『クラブの責任者の仕事をしていみたい』

『△▽さんと一緒に仕事がしたい』…と言われていますか?

そして、あなたが事務所にいれば、スタッフは誰も寄り付かず、話しかけすらされない…なんてことにはなっていませんか?構成員のトップにいるクラブの責任者の輝きこそが職場の雰囲気を決めるのです。

責任者としての魅力・輝きとは?

クラブの責任者ともなると責任に加え業務量が大幅に増えますから、時間的が余裕がなくなり、部下とのコミュニケーションがおろそかになりがちです。常に、PCに向かってしかめっ面、機嫌を伺いながら決死の覚悟で話しかけてきた部下に対しても、PCから顔をあげることなく、生返事。これが続けば、部下から話しかけられることもなく、相談されることなんて皆無となることは間違いありません。

“なぜ、そんなことが分かるのか?”

なぜなら、これは、私の経験だからです。私は29才ではじめて責任者となりました。何も知らない、何もわからない状態で朝7:00-深夜2:00まで営業のクラブを担当したものだから、毎日、必死でした。もちろん責任者ですから、日々の運営をきちんとするということも、損益計画をきちんと達成するということも当然ながら求められます。実力が伴わない中、必死で取り組みましすが、やはり、力不足。運営はなんとか継続できていましたが、損益は次第に厳しくなり、大好きだと思い続けた仕事が思うように楽しめなくなったのです。そうなると、部下やスタッフとのコミュニケーションがおろそかになり、部下からの報告や相談が一気になくなりました。

“では、責任者としていかに輝くのか?”

当然ながら責任者としての実力が十分に発揮できる人であるということもその要因の1つでありますが、それよりも重要だと思うのが、責任者自身がどうして、他のどの事業でもないスポーツクラブ事業を選んで仕事を続けてきたのか?これを伝え続けることなのです。

私も長いスポーツクラブ勤務で、沢山の経験をしてきました。大人のお客様に新たなチャレンジされて目標を達成された姿、スイミングスクールに通ってくれていたお子さんも練習ではとっても泣き虫なのに、学年縦割りの課外活動では下の学年の子供たちの面倒をちゃんと見てくれる姿だったり、全く知らない人同士がクラブを通してかけがえのない友人関係になっていく姿だったり…。人の成長を支え、人と人をつなぐ“場”としてこの世の中にスポーツクラブは必要なんだということを実感してきたからこそ、そして、触れ合ってきたお客様からの沢山の“ありがとう”と私を支え続けてくれた上司や先輩、部下があってこそ24年もの長き渡りスポーツクラブ事業に携わってこれたのだと実感しています。

この経験は、きっと皆様にもおありのはずです。それを、

“スポーツクラブって○○○だから私は仕事として選んだ”

“インストラクター、クラブのスタッフの仕事って◎◎◎だから続けてきたんだよ”

という自らの経験を言葉と仕事に対する姿勢で伝えてあげて欲しいなと思います。そのことこそが、部下やスタッフが今、クラブで働くことの意味や働きがいをつくる源になるのです。そして、そんな経験を部下やスタッフもするときが来たら、彼、彼女たちがクラブの責任者であるあなたに代わって、語り始めます。ここまで来れば、責任者の仕事は8割方終了です。

活動の魅力

活動の魅力とは、働いている部下やスタッフが、目指している方針、掲げている理念を魅力的に感じ、事業内容や仕事内容が好きかどうかということなのですが、そもそも、クラブの理念や方針をちゃんと言語化し、きちんと伝える機会を設けていますか?これがないと活動の魅力は伝わることはありません。きちんと言語化をしたいのは次の3つ

  • Misson(ミッション)…果たすべき使命や役割
  • Vison(ビィジョン)…目指す将来の時点での状態
  • Policy(ポリシー)…ミッション・ビジョンを実現するための指針 

先頭の文字を順にとって、私はMVPと呼んでいます。これがしっかり定められていれば、例え、経営や運営する中で迷いが生じたり、揉め事がおきたとしても、MVPに戻ってその事象を見つめたときに、自ずから、進むべき道が見えてきます。もし現在、このMVPがかっちり決定されていないのであれば、今いる部下、従業員みんなで決めるということを、私はお勧めしています。

そして、MVPはあるけれども、伝える場はないということであれば、責任者自らが語る場(例えば、朝礼や昼礼等)を活用して、毎日伝えるということをしてみてください。年度の初めや終わりの大きな会合やミーティングの場だけでは浸透しません。5分10分の日ごろのコミュニケーションを取るなかで継続的に行うことが最も効果的です。はじめは、部下やスタッフも“また、言っているよ”と思われることでしょう。ですが、継続するうちに間違いなく、スタッフの言動は変わり始めます。諦めることなく、まずは…継続を。

私には、忘れられない思い出深いPolicy(ポリシー)があります。それは、はじめて入った会社で教えられた行動指針。それが、次の3つです。

  • 愛情、感謝、礼節を拡げよう。
  • 体育を通じた健康な心身を拡げよう。
  • 能力への挑戦を拡げよう。

大好きな行動指針でした。毎日、毎日唱和し、まさしく、このポリシーが実践されているし、実践していました。だから25年以上経った今も言えるし覚えているのだと思います。そんなポリシー一緒に作ってみませんか?

特権の魅力

特権の魅力とは、その組織に所属していることで、納得のいく給与や休暇が得られるかなど、自分にとって魅力的な権利が得られるかどうかということです。

例えば、インストラクターであれば、所属することで定期的にブラッシュアップのための研修に参加できる…とか、施設利用ができる…というのも特権の魅力でしょう。それから、法定以上の福利厚生が充実している、休暇が充実している。そして、何より給与が魅力的…ということもここに含まれます。

ですが、注意頂きたいのは、特権の魅力だけで入社したスタッフは長く続かない…ということです。なぜなら、他に良い労働条件の仕事があるのであれば、そちらを選んでしまうからです。ですから、所属している間に、『構成員の魅力』と『活動の魅力』に気付かせることが重要です。

部下やスタッフの志向性に合わせたコミュニケーションを心がけるということも大切なのですが、それよりも、まだ実感できていない魅力要因に気づかせる力がスタッフ定着には必要なのです。

また、よくあることなのですが“同期入社”で仲良かった同僚が事情でどんどん辞めていってしまった。同僚とのコミュニケーションを取る事、同僚の頑張る姿を励みにして頑張ってきたスタッフはみるみるモチベーションが下がります。このタイプのスタッフは間違いなく『構成員の魅力』でモチベーションを維持してきたタイプだからです。この場合、残る2つ『活動の魅力』と『特権の魅力』をいかに伝えるか?が定着を左右します。

ここまで、お話ししてきてお気付きだと思いますが、いずれにしろ、クラブで働くスタッフひとりひとりときちんと接点を持ち、コミュニケーションを取った上で、彼・彼女たちを知らなければ、定着はありえません。

スタッフを採用するときに気をつけたいこと

空前の人手不足

厚生労働省が平成30年3月2日に発表した平成30年1月の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率は1.59倍、求職者1名に対して1つ以上の仕事がある状況が続いています。つまり、求職者は仕事を選ばなければ、必ず仕事が見つかる環境であり、反対に、皆様方、クラブ側が、思ったような人材と巡り合うためには、相当の準備と覚悟が必要であることを意味しています。なぜなら、事業を継続し、発展させるには、この『人手不足』の世の中を、名だたる大企業と肩を並べ、人を採用し、育成することで渡り合う必要があるからです。

さて、ここで、皆様に質問です。皆様にとって、“思ったような人材”とはどのような人材でしょうか?私は社会保険労務士として活動していますので、様々な業種の社長、事業主の方とお話しする機会がありますが、必ずと言っていいほど採用と定着の話になり、繰り広げられる会話はこんな感じです。

社長:『募集しても人が来ないし、来ても思ったような人が来ない!』

私:『お気持ち、お察しします。どこの社長さん、事業主さんもそんなお話しされますね。』

社長:『そうでしょう。本当にこの先、上手く採用ができるか心配だ。』

私:『募集については、労働条件の見せ方の工夫や利用する媒体にもよると思いますが…。』

私:『ところで、御社にとって“思ったような人”ってどんな人ですか?』

社長:『優秀な人材に決まっている!』

私:『御社にとって優秀な人材とは?どんな人材のことですか?』

社長:『優秀…と言ったら、優秀だろ!!』

会話のように、採用したい人物像は“優秀な人材”とおっしゃる方が大半ですが、その先の自社にとっての“優秀な人材”を定義される方は残念ながら、ごく稀です。

クラブによって変わる?“優秀”のモノサシ

私は、クラブによって、“優秀”のモノサシは変わって当然だと思います。それは、皆様方が様々な思いや志をもってクラブを創られているからです。100社あれば100社ともその思いや志が異なるはずですから、求める人材、採用したい人物像は変わるはずです。だからこそ、『御社にとっての優秀な人材とは?』の問いに、明確に答えられるように、経営理念から落とし込んだ“理想の人物像”を明確に言葉にすることが必要なのです。これをすることにより、急場しのぎのためだけの採用を避けることが出来、こだわりの採用活動につながり、結果、“思ったような人材”に巡り合える機会が確実に増えます。そして、そのモノサシは、採用に関わる人間すべてが同じあるということがとても重要です。採用基準が採用に関わる人の好みに左右されては、いつまでたっても決まりません。採用活動をスタートさせる前に、まず、経営理念や行動指針から「どんな資質を求めるのか?」「何を優先するのか?」を毎回、すり合わせる。経歴や経験は履歴書や職務経歴書で確認することができますが、肝心の「資質」や「性格」といったところを確認する質問の投げかけは細心の注意を払う必要があります。

例えば…精神的な安定が高い人を採用したいと考えている場合に、『あなたは、怒りっぽいですか?』と聞いたとしても、受験者は全員『いいえ』と当然ながら答えますよね。これでは、本質に全く近づくことが出来ません。こんな場合でしたら、『この1週間で怒りを感じたことを答えてください』とか『最近、最も怒りを感じた出来事は?』という質問にすれば、どの程度の出来事で怒りを感じる人なのか?頻度が多そうとか…少しは求める傾向を読み取れるのではないでしょうか?

ですので、面接前の面接官同士打ち合わせは本当に重要です。こういった質問をいくつ準備してどのタイミングで、誰が投げかけるのか?をあわせるだけでも相当時間を要します。当たり前のことですが、スタッフを定着させるための第一歩は『採用』からですからね。

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morikawa55-tomoe

morikawa55-tomoe

代表社会保険労務士森川事務所
スポーツクラブ定着コーチ。社会保険労務士。 大阪生まれ。スポーツクラブを運営、経営する企業に、スタッフも会員も定着する施設を作るノウハウを伝える専門家。「スポーツクラブのための定着率向上委員会」をベースに、施設ごとに、ワークショップ型のコンサルティングを手掛けている。